2013年8月27日火曜日

「ハーモニー」読了。

伊藤計劃の「ハーモニー」を読了しました。

以下ネタバレ。


「虐殺器官」もそうでしたが、すべてはあのエピローグにかかっていると思うのです。
内面を消失した人間があんなに装飾的な文章を書くのだろうか、と思わずにはいられない。
というか、内面を消失した人間がなぜ『人類はいま幸福だ』とわざわざ書かなくてはいけないのか、と。
「とても。とても。」と繰り返して強調する必要が、完全なハーモニーを実現した人類に必要なのか?と。

ディストピア(≒ユートピア)が完成してしまうという、作家自身が『途中報告』と言ってしまうこのモヤモヤとしたものが抜けないエンディング。
もう永遠に次作はないということと相俟って、このモヤモヤとしたものを残すエンディングこそが「ハーモニー」のキモであると思うのです。


ここからは部分的なハナシですが。
「涼宮ハルヒの憂鬱」や「オブザベースボール」(円城塔)を思わせる部分が印象的ですが、実はこれ「敵は海賊・海賊版 DEHUMANIZE」へのオマージュなんじゃないかな?とも思います。
敵は海賊・海賊版では、エピローグで『神の視点』を持つ書き手がいきなり登場人物と同じレベルに引きずり降ろされるという思わぬ逆転劇が待っているわけですが、あとがきを読む限り、ハーモニーのエピローグにおける書き手はそもそも『神の視点』を持つ何者かであるはずもなく。

やっぱり、エピローグの書き手は『ハーモニー』から逸脱して、それを外から観ている何者かなんじゃないかな、などと思ったりもするわけです。

いずれにせよ、語りたくなる作品ではあります。



あ、そうそう。


百合方面でもちょうおすすめ。

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